今回は私たちが今、特に注目しているパワー半導体の新しい材料、「酸化ガリウム(Ga₂O₃)」についてお話しします。
「酸化ガリウム?」と聞いてピンとくる方は、正直あまりいないかもしれません。実は私たちも最初は戸惑いました。ガリウムといえば、理科の実験で「手で温めたら溶けちゃう金属だ!」とびっくりした方もいるかもしれませんし、さらに「酸化したシリコン=ガラス=絶縁体」ってことは、酸化したガリウムも電気を通さないんじゃ…?と思った方もいるのでは?
この酸化ガリウム、実はとってもタフな性質を持っていました。専門的には「絶縁破壊電界」と呼ばれるのですが、これはペラペラの、薄~いGa₂O₃が“すごく高い電圧にも耐えられる”ということ。つまり、ちょっとやそっとの電気ではビクともしない、頼れる存在なんです。
注目すべきポイントは3つ!
1つめは、色々な材料のなかでもトップクラスの低損失!Ga₂O₃は他の材料に比べて、ペラペラで高い電圧を安全にコントロールできることから、発熱を抑えることにつながります。今よりもっと省エネでコンパクトな家電やスマホの充電器が実現できるかも…!
2つめは、コスト面の強み。実はガリウムは比較的簡単なプロセスで作ることができ、大量生産にも向いています。「高性能は高価で当たり前」を変えていくかもしれません。
3つめは、脱炭素社会への貢献への貢献。いろんなロスを減らしてCO₂排出削減ができれば、“カーボンニュートラル”な未来にもグッと近づきます。FLOSFIAでは、パワー半導体における “3大ロス” の低減を目指す「半導体エコロジー®」という独自のコンセプトを掲げています(これについては、また別の機会に!)。
そんな酸化ガリウムのすごい可能性、私たちも日々ワクワクしながら研究しています。次回は上記の1つめのポイントを深堀りし、「絶縁破壊電界」というGa₂O₃の特徴がなぜ低損失に直結するのか、そのヒミツを解説したいと思います。実は“オン抵抗”など、聞きなれない(かもしれない)話もあるのですが、楽しくお届けしますので、どうぞお楽しみに!