はじめに:デバイスから「安定した製品」へ
優れたデバイスを「高品質」「安定供給」できる“製品”として社会に届けるには、さらなる壁を超える必要があります。
FLOSFIAが挑むのは、量産・再現性・コスト・信頼性という極めて実践的な課題の克服。
その中心にあるのが、“酸化ガリウムならでは”の製造プロセスと、それを支えるインテグレーションの知恵と現場力です。
独自プロセスが開く、量産への道
FLOSFIAが扱うα型酸化ガリウム(α-Ga₂O₃)は、従来の半導体材料と大きく異なる特性を持つため、製造プロセスも独自のものが必要です。
■ 主な独自製造プロセス
エピタキシャル成膜:
ミストドライ®法による非真空・低温のエピ成膜により、低コストかつ高品質な成膜を実現。4インチサファイア基板への対応も達成。
金属支持基板への転写技術:
成膜後のα-Ga₂O₃をサファイア基板から金属支持基板へ転写し、放熱性・信頼性を兼ね備えた構造を実現。
これらは従来プロセスとの互換性が乏しく、試作・検証・最適化のすべてを自社で積み上げていく必要がありました。
信頼性の壁を越える:標準を超える品質を
高性能デバイスであっても、市場に送り出すには“標準試験”をクリアする必要があります。
パワーデバイスにおいては、以下のような厳格な信頼性試験が課せられます。
・高温動作/高湿度環境下での通電試験
・サーマルサイクルや電流ストレス下での劣化試験
・繰り返し通断に耐える構造信頼性評価
FLOSFIAでは、これらの試験を初期段階から繰り返し行い、工程改善や材料最適化を重ねて「すべての項目を安定してクリアできる品質」を追求しています。
セミファブレスからの転換:統合立ち上げへの挑戦
当初、量産立ち上げはセミファブレスモデル(外部ファウンドリー活用)を想定していました。
しかし、α-Ga₂O₃という未知の材料を扱う上で、製造プロセス・装置・条件最適化を外部任せにすることの難しさが浮き彫りになりました。
結果として、FLOSFIAはマザー工場でほぼすべての工程を自社で立ち上げる体制へと軌道修正しました。
■ 自社立ち上げのメリット
・装置選定から導入・検証・条件最適化まで一貫して対応可能
・プロセスデータの蓄積と即時のフィードバックが可能
・開発・製造・信頼性評価がシームレスに連携し、最適解を迅速に探索可能
この決断は短期的には負荷を伴いましたが、長期的にはFLOSFIAの強みを生み出す源泉となっています。
技術統合の現場:見えない努力の連続
α-Ga₂O₃の製品化には、目に見えない多層的な統合努力が求められます。
・仮説 → 試作 → 出来栄え評価 → 改善……という試行サイクルを何度も繰り返す
・試作に1〜数ヶ月かかるため、要素単位と全体統合の並行検証が必要
・高度かつ幅広い専門領域が絡み合い、社内での分担設計も複雑
・パラメーターの数が多く、制御と変動要因の切り分けが必須
・多種多様な素材・装置・測定手法を扱い、外部連携の柔軟性も求められる
このような“開発と製造の境界をまたぐ”インテグレーションこそ、FLOSFIAの最大の強みです。
まとめ:量産を支える「統合された製造力」
FLOSFIAは、α-Ga₂O₃という革新的材料を用いながら、自社内での製造立ち上げ、信頼性確保、工程最適化を一貫して進めることで、“社会に届けられる製品”の姿をつくりあげてきました。
材料・成膜・転写・評価・信頼性・設備・外部連携――それぞれが分断されることなく統合されたものづくり体制こそ、FLOSFIAの強さです。
次回は「モジュール・システム編」として、モジュール製品化や顧客システム実装に向けた新たな統合チャレンジをご紹介します。どうぞご期待ください!